【書き起こし】 橘玲さん「30年で資産を増やす株式投資入門」を語る

プロから直接学べる音声メディアVOOX。10分×全6回のコースのうちの、1エピソードを完全書き起こしで紹介。 橘玲さんご本人が、資産運用の入門編として株投資を中心に解説すると共に、人生100年時代が現実味をおびてくる中、経済的な独立を達成し好きな仕事をずっと続け、幸福に生きるライフスタイルを提唱します。

(オープニングジングル)

橘:

皆さんこんにちは作家の橘玲です。今回から全6回にわたって30年で資産を増やす株式投資入門と題する講義をお届けします。講義に入る前に簡単に自己紹介をさせていただきます。

私は35歳まで中堅の出版社で働いていたんですけども、まあその頃から、そろそろサラリーマン生活はいいかな、自分で独立してやってみたいなというふうに思うようになって、初めて自分の人生をファイナンスの面から考えるようになりました。その頃は、給料を毎月もらわずにどうやって行きていけばいいのかって全く見当もつかず、それで初めて自分は世の中のお金のことを何も知らない。お金はどのようにして生まれて、どんなふうに流通するんだろうというのが疑問に思ったことが、こうした金融市場について調べ始めたキッカケになりました。


老後2000万円では足りない

資産運用をなぜやらなければいけないのか? それについて私は次のように考えています。1つは高齢化が進んでいる。人生100年時代というふうに言いますけれども、これは平均年齢が100歳になるということだけではなくて、健康な人は実はもっと長く生きる。これは医療の専門家によると、現在30歳の人の4人に1人は110歳まで生きるというふうに予想されています。で、これは医療の進歩があるからなんですけれども、そうすると60歳で定年退職してしまうと、人生は残り50年ある。これ半世紀生きなきゃいけない。で、これはほとんどもうサイエンスフィクション、SFのような世界ですけれども、それが現実のものになってくる。その時にあの何をしなければいけないのか? まあ1昨年ぐらいに老後2000万円問題っていうのがあって、大きな話題になりましたけれども、それは定年退職時に2000万円なければ安心した老後を過ごせないということでした。ちょっと考えてみて、50年で2000万円っていうことは、1年間で40万円、月3万3,000円。夫婦2人だと月1万4,000円しかならないですね。これで果たして安心した老後が過ごせるのか。一般にファイナンシャルプランナーの人たちが言うのは、定年退職した時点で住宅ローンを支払った不動産、プラス5000万円の金融資産を目指しなさいっていうふうに言うわけですけれども、じゃあその5000万円の金融資産があったとしてどうなるかというと、50年で年100万円。月だいたい8万3,000円、1人当たり4万円ちょっと。同じようにこれで本当に安心できるのか。そう考えると、やっぱ半世紀の老後というのはとてつもなく長い。

ここで提案したいのは、発想を変えてもう少し長く働く。80歳まで働いてみよう。そこで80歳まで働いて年金プラス1億円の金融資産を作る。それをが提案なんですけど、そうすると30年で1億円ですので、年330万円で月28万円、1人当たり14万円と年金が入ってくる。これだと割と安心して暮らせるんじゃないか? それを目標にして1億円というと、まるで雲をつかむような話に思いますけれども、それが現実のものだということをお話ししていこうと思います。

自由に生きるための資産運用

もう1つ重要なのは何故資産運用するのかということです。それは私は自由に生きるためだというふうに考えています。お金と自由というのはあまりセットで語られませんけれども、例えばこんなふうに考えてみてください。今、例えばあなたがものすごく自由に生きていると思っている。でもある日会社に行ったらもう明日から来なくていいよ、あるいはうちの会社今日でつぶれちゃうんだよ、あとは自分で頑張ってきてくださいと言われてどうなるのか? あるいは例えば専業主婦の方がとても幸せで、自由に生きている。ある日突然、夫から好きな女の人が出来たからもう出て行くよ。あとは君が勝手に生きてくださいと言われたらどうするのか? あと例えば年金をもらっている人も、毎月たくさんの年金をもらって自由に生きている。突然、テレビで首相が出てきて、日本の国は破産しました。もう年金は払えません。あとは皆さん頑張って生きてってくださいと言われて、その時どうなるのか? その時、あなたは本当に自由なのか? これが今、経済的独立、financial independenceという考え方なんですけれども、1990年ぐらいから言われ始めて、結局その自由っていうのは心の問題じゃなくてお金のことなんだ。お金がなければ自由に生きられないでしょう? で、これがやっぱりすごい衝撃で、そのためには、単に自分が自由なんだっていうふうに思っているだけでは全く自由じゃない。そのためには金融資産という土台が必要なんだという。これが資産運用する1番の理由になるんだと思います。

これから、このコースでそれについてお話していきたいと思います。ここでなぜ株式投資についてお話しするのか? 普通は資産運用って考えるとマイホームを思い浮かべると思いますけれども、1つは、とりあえず老後のために家を買っておこうっていう人がいますけれども、でもそれは人生が70歳、80歳で終わっていた時代の発想で、自分の親や、おばあさん、おじいさんのことを考えればわかると思いますけれども、じゃあ90歳とか100才になるような人がたくさんいる中で、1戸建ての家を自分たちだけで住んでいて、掃除、ゴミ捨て、庭の草取り何から何まで 全部自分で出来るのかっていうふうに考えたら、到底無理ですね。だから、超高齢化社会では必然的に最後はみんなサービス付きの高齢者住宅とか、有料の老人ホームとか、そういうところで暮らすようになる。もちろんマイホームを持って、買う人もいるし、ずっと賃貸で過ごす人もいるけれども、最後はみんな賃貸になるんだ。最初の不動産、マイホームプラス5,000万円っていう発想は、最後までずっとそのように住み続けるっていうのが前提になっているわけですけれども、もうそういうことは分なくなるだろう。で、最後はみんな家を売るなり、あるいはリースして賃貸するなりして、金融資産に換えて、自分は施設に移っていくっていうのがこれからの人生の終わり方になっていく。そう考えると、不動産について、特に不動産と金融資産がどちらがいいのかっていうような議論はする必要はなくて、そもそも全部金融資産にならしていくら持っているのか、というふうにま考えればいいんじゃないかというふうに思います。

賃貸か持ち家か問題

あと、よく聞かれるのはマイホーム。つまり不動産は家を買った方がいいですか? それとも賃貸がいいですか? って話なんですけれども、これに関しては私はどちらも同じというふうに考えています。これがあの普通に考えてみて、もしあの家を買った方が圧倒的に有利だったら、世の中に賃貸ってビジネスがなくなりますよね。どんな人もローンを組んで家を買って行けばいいわけだから。賃貸する人たちがいない。あるいは逆に言うと、すべてが賃貸の方が有利だったら家を買う人はいなくなる。これはあの、これからお話する基本的な市場のメカニズムなんですけれども、最終的には得も損もないところで落ち着くっていう。例えば、持ち家の方が絶対有利だっていう人もいますけれども、でもそれは経済合理的に活動している企業がほとんどが賃貸で事業をやっているっていうことと、話が辻褄が合わないですよね。で、もし持った方が良いんだったら、過去にはダイエーみたいな会社がありましたけれども、どんどん不動産を買って大きくなっていく。でも最終的にはつぶれちゃった。

で、残っているのはこれずっと賃貸で事業をやってきた会社が残っている。それを考えただけでも、なんか不動産を買った方が絶対に得だっていうふうには言えない。逆に言うと。でも賃貸だったら上手くいくのかっていうとそうもいかないし、ある種運のいい人、例えば今、世界中でどんどんお金持ちが増えてますけれども、その1番の理由は、ニューヨーク、ロンドン、パリっていうような大都市の高級住宅街にたまたま家を持っている人。あの頑張ってローンを組んで買った人が、日本のバブル景気と同じような勢いで地価が上昇していって、それで中国もそうですけれども、北京、上海、そういったところに不動産を持った人がどんどん億万長者になっていく。そういう不動産には宝くじ的な要素があるので、日本の場合は地価が上がらないので、なかなか億万長者の数は増えないんですけれども、世界的にはどんどん増えている。

その1番の要因が、不動産が上がっているから。なんかそういう意味では、不動産を買って成功する人もいるけれども、結局住宅ローンが払えずに失敗する人もいる。賃貸の場合には賃料さえ払えれば確実にそこに住めるし、不動産が暴落しても、あるいは地震とか起こって家が潰れてしまっても引っ越せばいいだけ。リスクはないけれどもリターンがない。だからその結局はそのどちらを取るかっていうお話で、その意味ではもう自分で決断するしかない。どちらが絶対に得だということはない、というふうに考えています。それでは、次回は資産運用の方程式についてお話して行きます。

(以上、書き起こし終了)

30年で資産を増やす株式投資入門 全6話 60min

1. なぜ私たちには資産運用が必要なのか
2. 資産運用の方程式
3. 株価はどのように決まるのか
4. 投資は短期ではなく長期で
5. 投資が失敗するときの典型例
6. 幸福の資本論

橘玲

作家、2002年国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』、『上級国民/下級国民』、『専業主婦は2億円損をする』、『国家破産はこわくない』などベストセラー作品が多数。

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