【書き起こし】杉本亜美奈さん「フェムテック〜タブーをワクワクに変える新市場」

プロから直接学べる音声メディアVOOX。10分×全6回のコースのうちの、第1話「フェムテックの成り立ち」を書き起こしで紹介。フェムテック企業に投資をしてきた杉本亜美奈さんが、日本でも注目されつつあるフェムテック市場を解説します。

(オープニングジングル)

杉本:

皆さんはじめまして、Fermata株式会社の亜美奈です。今回よりお送りする「フェムテック〜タブーをワクワクに変える新市場」では、フェムテック企業への投資や、フェムテック商品の販売、起業コンサルに加えて、日本だけではなくアジアも含めてフェムテックを1つの市場として産業化していこうと、Fermataの活動、企業した背景、私の個人的な経験も踏まえて、近年国内外で注目されつつあるフェムテック産業の、今と今後について解説 していきます。

初めに簡単な自己紹介をさせてください。私の父はマレーシア国籍、今はもう帰化しているんですけど、母は日本国籍のミックスの家庭で生まれ育ちました。幼少期を東アフリカ、タンザニアという国で育って、学部までヨーロッパで過ごしています。東アフリカに行ったときは、絶対的貧困という1日1ドル以下で生活する人達がマジョリティーだったので、そういう環境の中で育っていると、どんな環境で生まれるかとかというのも、偶然と運でしかないんだなってことに気づき、その中で医療物資とか医療サービスへのアクセス問題に興味を持ち始めます。

例えば、マラリアの薬ですよね。タンザニアの田舎の奥地に、マラリアの薬を病院の先生が持ってたとしても結構な確率で現地の人に配られないことが多いんですよね。外国人が旅行者でやってくると、その人たちが高価で買ってくれる。なんかそういう、やはり医療って当たり前で、皆が平等にアクセス権がなきゃいけないっていうものなんだけれども、その国の状態だったりとか、背景とかによってアクセスできる人とそうじゃない人が生まれてくる。そんな課題に興味を持って、大学の時は医者になろうと一度思ったんですけども、マラリアの薬へのアクセスを課題に修士課程に進みました。その時に日本に帰ってきたんですけども、たまたま日本に帰って来たとき、2011年の3月だったんですけど、東日本大震災が起きて、マラリアの薬の研究をするお金がなくなってしまって、そのまま東日本大震災の後の福島で起きた原発事故の研究チームに入って、福島県の南相馬市立病院というところで、県民の内部被ばく調査を始めるんですが、その時に、医療物資とか医療サービスへのアクセスの問題っていうのは発展途上国の問題だけではなくて、日本のような先進国にも存在するんだなってことに気づくんですね。

その後、ちゃんとこれは勉強しなきゃいけないなと思って、医療政策だったりとか、医療経済、私たちの日本にある皆保険のようなシステムを支える政策とかですよね。それをちゃんと学ぶためにもう一回イギリスに戻って、Doctor of Public Hhealth という公衆衛生学の資格をとりました。

その後、どうしようかなってずっと思ってたんですけども、 当時は世界では、トランプがアメリカの大統領になりイギリスではBrexit(ブリクジット)が起きて、ヨーロッパ、アメリカで仕事に興味があまりなくなったので、自分がたまたま日本国籍を持ってたということもあって、選挙権がある国、自分が選挙に行ける国に生活したいなと思って日本に帰ってきたんです。日本に帰ってきた当初は、自分の医療経済とか、医療政策とか、公衆衛生という専門の分野でシンクタンクで働いてたんですけども、ある人との出会いをきっかけにスタートアップの投資を行うベンチャーで働くようになったんですね。


フェムテックとの出会い

今回のメインの話でもあるフェムテックに出会ったのが2017年、18年頃です。私が政策系シンクタンクで働いたのでそこを辞めて、孫泰蔵さんという方がいらっしゃるんですけど、ソフトバンクの孫正義さんの弟さんで、彼自身もYahoo! Japanだったりとか、ガンホーっていう会社とか、いろいろシリアルアトレプレナーという形で起業されていて、その彼が率いるMistletoe(ミスルトウ)というスタートアップコミュニティ、ベンチャーキャピタルにいた頃に、投資案件としてやってきたのがアメリカのModern Fertilityという会社だったんですね。そのModern Fertilityってサービスが何かというと、自宅で自分のホルモンチェックできるものだったんです。今、日本国内でも2社か3社ぐらい、自宅で自分の例えば女性ホルモン、AMHというホルモンを測ってどれぐらい妊娠できるのか、あと何年残ってるのか、そういうことを調べることができるキットっていうのが増えてきてるんですけども、その当時はそういうものがグローバルに見ても全くなくて、すごく衝撃を受けたのを覚えてます。この辺の詳しいところは、私がFermataを立ち上げるきっかけになったことを、第2話、次でお話させていただけると思うんですけど、今回は初回ということで、フェムテックの成り立ち、フェムッテックって何だよな、っていうのを話しさせていただければと思います。

そもそもフェムテックとは、2012年頃から投資家と起業家の間で使われるようになった言葉なんですね。デンマーク人の起業家でイダ・ティンさんという方がいるんですけど、その方が2012年ぐらいに月経アプリのClueっていうサービスを始めようとしたんですよ。彼女自体はもともと自転車乗りで、世界中自転車で旅をして回ってたらしいんですけど、スマートフォンが出始めたときに、アプリを使ったら自分の生理が管理できるんじゃないか、自転車を世界に乗りに行くのが楽になるんじゃないか、スケジュールも立てやすくなるんじゃないかと思ったらしくて、そのアプリを開発したところ、投資家に投資してくださいって持って行ったら、まあ今もそうですけど、当時もだいたい9割方の投資家っていうのは生物学的男性なので、彼らが悪いってわけではなく、ただ単にその必要性が分からなかった。生理管理してお金になるの? マネタイズどうするの? とかそういう質問が出てきて、ある人は、「生理なんて言葉使いたくないよ」とか。

そういう時に、当時はフィンテックとかエドテックとかいう言葉も流行っていたので、彼女もちょっといろいろ考えて、フェムテックという言葉を作って、それを使って投資家に資金調達をしに行ったところ、意外と反応が変わった、なんかフェムテック、新しいブルーオーシャンの市場、俺フェムテックに投資してんだ、私フェムテック知ってる、そういう形でなんかどんどん興味を持ってくれる投資家も増えてきたし、今までそういう女性の健康周り、ウェルネス周りのプロダクトがなかったわけではないんですよね。点在していたものがフェムテックって言葉の傘の下に集まり始めてきたというのがあるんですよね。だから今でもフェムテックって言葉、投資家とか起業家の間で使われているんですけど、そのメインの定義というか、私たちが使っている定義としては、生理や妊娠、更年期など生物学的女性の特有健康課題を解決するために開発された、テクノロジーを用いたプロダクト、というふうに今定義されています。

急成長するフェムテック市場

ただ、日本国内ではこの1〜2年、すごくおもしろい動きをしていて、ただ単に1つの産業としての言葉ではなくて、ムーブメント的な使い方をされ始めているんじゃないのかなと思います。そのことについてはまた詳しく話そうと思うんですけど、じゃあフェムテックの市場ってどれぐらいあるのかなっていうことをよく聞かれるんですけど、私がフェムテックを始めた2017年頃、結構言われたのが「それめっちゃニッチな市場じゃん」って言われるんですよね。

どこがニッチなんだろうってずっと思ってたのが、全世界の人口の半分の人が必要となるプロダクト、サービスだから、まったくニッチじゃないんですけど、でも実際問題、その潜在的市場っていうのが明確に、数字的に表されてきていたかって言ったらそうではなくて、今出ている数字も正確なものではないんですけども、2025年ぐらいまでには、アメリカではだいたい5兆円規模の市場になるんじゃないかなって言われています。

今年、2021年に経産省が、日本国内でのフェムテックの潜在的市場規模も出し始めたんですね、リサーチをして。それがだいたい小さく見積もって1.25〜1.4兆円ぐらいじゃないかなと言われています。これだけ潜在的市場規模があるということは、フェムテックの産業自体にもどんどん投資額が入っていってます。ドイツのイダ・ティンさんが投資を集めたとき、2012年ですね、だいたい全世界で60億円ぐらいしか投資が行ってなかったって言われてるんですけども、投資額がどんどん増え始めていて、2021年には2,000億円を超えるんじゃないかなと言われています。

日本国内でも凄い勢いで投資家の中でフェムテック業界、スタートアップに興味を持ってくれる人も増えていますし、大企業も興味を持ち始めましたよね。2021年現在なんですけど、フェムテック市場をグローバルに見て、スタートアップだけでだいたい700社ほどあるって言われています。2017年くらいは、だいたい50社ほどだったので、わずか4〜5年で14倍の数に増えている。すごい成長をみせている産業だなと私は個人的に思います。いろんな人がいろんな事を言うんですけど、過去に中国でフィンテックがものすごく成長し始めた、それと同じぐらいの勢いで成長している市場と言われてますね。

このフェムテック産業が確立されて、グローバルに産業化をされていくことでどんな未来が待っているのか? 全6回で私が注目するフェムテック企業の紹介も含めながらお伝えできればと思います。以上亜美奈でした。

(以上書き起こし終了)

「フェムテック〜タブーをワクワクに変える新市場」  全6話 60min


1. フェムテックの成り立ち
2. 自分の中の矛盾を起業テーマに
3. 2021年 フェムテック事情
4. レギュレーションはローカル、マーケットはグローバル
5. 注目のフェムテック
6. フェムテックを通して見える世界観

杉本亜美奈
Fermata Co-founder・公衆衛生博士
東京大学修士号、London School of Hygiene & Tropical Medicine (英) 公衆衛生博士号取得。 福島第一原子力発電所事故による被災者の内外被曝及び 健康管理の研究を行い、東京電力福島原子力発電所事故 調査委員会(国会事故調)のメンバーでもある。日本医療政策機構にて、世界認知症審議会 ( World Dementia Council ) の日本誘致を担当。厚生労働省のヤングプロフェショナルメンバーにも選ばれ、「グローバル・ヘルスの体制強化:G7伊勢志摩サミット・神戸保健大臣会合への提言書」の執筆に関わる。近年、Mistletoe 株式会社に参画。また、元 evernote CEO の Phil Libin 氏が率いる AI スタートアップスタジオ All Turtles の元メンバーでもある。国内外の医療・ヘルスケアスタートアップへの政策アドバイスやマーケット参入のサポートが専門。

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