(オープニングジングル)
野口:
はじめまして、野口竜司です。『文系AI人材になる』の著者で、さまざまなAIプロジェクトの推進とAI人材の育成をしております。今回から全6回にわたってAIと共に働くというテーマでお届けを致します。最近ではAIという言葉を見ない日はないぐらい、AIに関する議論が盛んになっています。AIが自分の仕事を奪ってしまうのではないか、という不安に思う人も多いのではないでしょうか?
実は、AIは人に使われるのを待っています。ですので、AIが自分の仕事を奪うというように、不安がっているだけではなく、いかにAIを使うか? このスタンスに立っていただくために、今回のテーマについてお届けを致します。今まで私が数多くのAIプロジェクトにかかわってきた中で感じたこと、必要となることについてお話をしたいと思います。具体的にはAIを使う専門家であるAIプロデューサー、これになるにはどうするかということをお届けしたいと思います。
AIを使う上で大事にしなければいけないのは、AIと向き合うスタンスが非常に大事になります。これは「使う」という言葉があまりよくないのですが、従えると言うよりも一緒に働いていく、一緒に生活していくというスタンスだと、うまくAIをワークさせることができるようになります。これは「AIとの共働き」という言葉が非常に適していると思うんですけども、やはり共に働く、共に生きるというようなことがキーになってくると思います。
AIと共働きをすることを進める上では、やっぱりAIのことをまずよく知らないといけません。これはプログラミングスキルを磨いてくださいみたいな話では全くないんですけども、一方でAIと共にうまく働いていく生きていく上では、最低限必要な知識、AI知識がありますので、これやはり覚えていただきたいと思います。あと、たくさんのAI事例を知ることですね。どのようなところで、どういうふうにAIが機能しているのか、役立ってくれているのか、ということをとにかくたくさん量を知る、ということが大事になるかなと思います。
例えば職場ってイメージすると、AIを機械として捉えるんじゃなくて、人として捉えるというのがポイントになります。もう少し掘り下げると「同僚」ですね。AIを同僚として捉えるというところまで行き着くと、非常にうまくAIと付き合えるんだと思います。いわゆる中途社員でいうところの同僚さんって、得意なところもあれば、不得意なところもありますよね。AIについても、完璧な万能な人・存在、というようなとらえ方ではなくて、苦手なところもあれば、得意なところもあるというようなイメージを持っていただいて、付き合っていくのが良いんだと思います。
AIが、やはり万能じゃなきゃいけないっていう思い込みが非常に多いと思います。AIが万能じゃなければいけないということを具体的に突き詰めていくと、AIの精度、例えば予測する精度が95%以上とか、なんなら100%に近くないと職場で使えない、みたいな論になってしまうんですけども、実際にはそうではなくて、AIが例えば70%、80%ぐらいの精度で予測できると、逆に言うと20%ぐらい間違うわけですけども、その間違いを許容してあげるとAIが働ける場所、AIが機能する場所というのが格段に上がってきますし、それにより人の生産性というのが上がってくる、というようなことを実現できるんだと思います。
AIがまず得意なことは、正しい答えが存在する、たくさんの正しい答えが世の中に存在するものに関しては、AIは非常に精度高く回答を導くことができます。一方で答えがないようなもの、特にクリエイティブなものとか、正解がなかなかはっきりと定義できないような物については、やはりAIは苦手といえます。あとは完璧な仕事をやりきるという観点において、AIが得意なようで不得意だということがあり得まして、これ何かというと、たまにAIは予想しないような、ちょっとイレギュラーな回答を出す時があるので、そこは特徴として捉えながら付き合うのが良いんだと思います。それはある意味AIが苦手な事というふうになるかもしれません。例えばですけども、これはいい例ですが、囲碁や将棋を打つ時に、人間が考えないような一手を打つみたいなことってあり得ますよね。それって、回り回ると正解なんですけども、人間としてはイレギュラーというか、想定外の回答を出してくるんですよね。これ囲碁や将棋だからいいんですけど、世の中で、例えば交通ルールに沿って自動運転車が走る時に、最短だからといって思いきり違う道を走ったりしたら大変じゃないですか。なので、ある一定の秩序の中でAIが回答として出してはいけない、イレギュラーなところは抑えなきゃいけないという意味で、そういった例が出せるんじゃないかなと思います。
少し曖昧性が残るようなもの、例えば企業理念が正しいのかどうかですとか、企業理念のフレーズを考えるとか、そういったことについては非常に苦手ですね。コピーライティングとか、とても苦手だと思います。例えばAIはコピーライティングについて、たくさんのバリエーション、組み合わせを、それらしい言葉の組み合わせとして作ることができると思うんですが、人間が受け取って感情が揺さぶられるかどうか、みたいな感性の部分に関してはまだまだ弱いので、苦手なこと1つとして定義できるのかなと思います。
AIと人間が働いていく上で、3つのパターンを認識しておく必要があります。1つは、人の仕事をAIに補助してもらうというパターン。もう1つは完全にAIだけで仕事をするパターン。もう1つは、AIの仕事を人が最後にちょこっとだけ補助するというパターンになります。
1つ目に言った、人の仕事をAIが補助するパターンっていうのは、人を横棒としてAIを縦棒としてみると、横棒の人をAIが下支えするというようなイメージになると思うんですが、これ私はT型と呼んでいます。次にAIが自律的に仕事するという意味で、縦棒が自律的に仕事するのをI型って私は呼んでいて、一方で先ほど紹介したT型、このTを逆さまにすると、縦棒のAIを横棒の人が支えるというふうになると思うんですが、これは逆T型と呼んでいます。なので人とAIの仕事の分量を、どちらが主として動くかによって働き方のスタイルというのは変わってきますので、この3つが存在するということを抑えるのがポイントになると思います。
AIプロデューサーというのは、これまで話してきたような、AIと共に働く場所をプロデュースする人と言えると思います。AIというのは得意な事、苦手な事があるということを話してきましたが、それらの得意・不得意を把握しながら、つまりAIの知識というのは一定量を持ちながら、目の前にある課題を解決する、そのような実行力を持つという人がAIプロデューサーになります。今はAIを作ることが非常にカジュアルになってきていまして、AIを作る側の人というのは非常に増えてきていますし、AIがすでに作られた状態で、世の中にサービスとして提供されていることも非常に多くなってきています。これは作られたAIを、社会とか、会社とか、生活に入れ込むことがなかなか進んでいない現状がありまして、これらAIをいかに生活現場・職場現場にスムーズに入れ込むか、こんな時にAIプロデューサーが重宝されてきます。
次回以降では、このAIプロデューサーになるためにどうすればいいのかということについて、具体的な方法を話していきたいと思います。今回は「AIは人に使われるのを待っている」についてお話をしました。お相手は野口竜司でした。
(以上、書き起こし終了)
1. AIは人に使われるのを待っている
2. AIプロデューサーとは何か
3. AIの8つのタイプを知る
4. AIの企画を立ててみよう(1)
5. AIの企画を立ててみよう(2)
6. AIで社会はどう変わるのか
野口竜司
『文系AI人材になる』の著者、「文系AI人材」として、さまざまなAIプロジェクトの推進とAI人材の育成をしている。