音声メディアとは、テキストや画像、動画、音楽ではなく、主に音声による情報が配信されるメディアサービスです。音声配信サービス、音声アプリなどとも呼ばれます。
また、音声メディアで配信されるさまざまな情報の形を音声コンテンツと呼びます。
音声メディアには、インターネットラジオやポッドキャスト、本の内容を読み上げるオーディオブックなど、たくさんの種類があります。主にインターネット上で展開されるサービスのうち、人間が発する音声のコンテンツが配信されるという点が特徴です。
ここ数年で、音声メディアの注目度は高まっています。音声メディアサービスのひとつの形である「ポッドキャスト」について、Googleトレンドの「人気度の傾向」を過去5年で見てみると、右肩上がりに推移しています。
インターネットや、スマートフォン、スマートスピーカーなどのデバイスの発達により音声メディアがより簡単に利用できるようになったという背景があります。
それに加えて、2020年ごろからは新型ウイルスが流行したことで生活様式が変化し、在宅勤務が増えたことも、音声メディアの利用者が増えている理由のひとつと言われています。在宅勤務の最中に、あるいは健康志向も相まって散歩中に、何かをしながら聴く「ながら聴き」での音声メディア利用が増えたようです。
情報配信のメディアには、もちろん音声の他にもテキストや動画などさまざまな形があります。その中でも音声メディアを利用するメリット/デメリットはどういったものなのでしょうか。
他フォーマットをメインとするメディアと比較した時の音声メディアを利用する最大のメリットは、主に以下の2つです。
テキストや動画と違うのは、他の作業をしながらでも聴くことができるため、ながら聴き(ながら作業)で情報を得ることができる点です。また、オーディオブックという本の読み上げコンテンツが配信されている音声メディアであれば、字面を読むことが苦手な方でもほんと同じ内容を聴くことができます。
音声メディアを利用することのデメリットは、当たり前のことですが視覚情報として入ってこないという点です。例えばスポーツの結果を知りたい時などには、実際にプレーしている映像を見たいと思います。
一口に音声メディアと言っても、さまざまな種類があります。ここでは機能や特徴別に音声メディアをご紹介します。
インターネットラジオは、本来は電波の送受信を利用して聴くラジオコンテンツを、インターネットを通して利用できる音声メディアです。
一般的にラジオ放送はリアルタイム(生放送)ですが、インターネットラジオでは事前に録音されたコンテンツも扱っていることがほとんどであるため、好きな時間に聴くことができます。
現在あるサービスについては、基本利用については無料で提供している場合がほとんどです。
radiko(ラジコ)は、パソコンやスマホでもインターネットを利用してラジオを聴けるサービスです。一部を除いて、全国にあるほとんどのラジオ局で放送されたラジオ番組と同じコンテンツが、ラジコでも聴けるようになっています。
放送から1週間以内のラジオ番組を聴くことができますが、無料版ではラジコを利用する場所によって聴けるコンテンツが限られます。有料版では「エリアフリー」という機能により、どこにいても全国のラジオを聴くことができます。
参加するラジオ局と取り扱っているラジオ番組の多さは、他のインターネットラジオサービスと比べて圧倒的です。パソコンなどでウェブサイトから利用することもできますし、スマートフォンアプリでも利用できます。
ただし、ストリーミング再生になっており、あらかじめコンテンツをダウンロードしておくことはできない点には注意が必要です。
らじる★らじるは、NHK(日本放送協会)が提供するNHKラジオのうち、ラジオ第1(R1)、ラジオ第2(R2)およびNHK-FM放送のラジオ番組を、インターネットで提供する音声メディアです。
インターネットラジオサービスの中では比較的早い2011年のスタートですが、主にラジオ局の電波が届きづらい場所にいる人でもコンテンツを利用できるよう始まったサービスです。原則国内での利用に限られています。
ウェブサイト、アプリのいずれも利用でき、また(権利を理由とした例外を除いて)過去のラジ番組の聴き逃し配信も提供しています。NHKのラジオ番組を利用したい方にはおすすめのサービスです。
オーディオブックは、本の読み上げコンテンツを提供する音声メディアです。読書とは違い、運転や料理など他のことをしながら、ながら聴きできるのが最大の特徴です。
また、字面を読むことが苦手という方でも、オーディオブックなら利用しやすいのではないでしょうか?
Audibleは、Amazonが提供するオーディオブックサービスです。他のオーディオブックサービスと比べて、より多くのコンテンツラインナップが用意されています。
基本的に有料で利用するサービスで、月額1,500円で12万冊以上の内容が聴き放題になります。無料体験を利用すれば、30日間のみ無料で利用することもできます。なお、聴き放題対象外のコンテンツについては、都度購入することが必要です。
Amazonと言えばプライム会員を思い浮かべる方もいるかと思いますが、プライム会員でもAudibleを利用する場合には別途Audibleの月額会員費が必要です。ただし、プライム会員向けには不定期でキャンペーンが開催されているので、気になる方はチェックしてみましょう。
audiobook.jpは、250万人以上のユーザーを抱えるオーディオブックサービスのひとつです。ウェブでもスマートフォンアプリでもどちらでも利用可能です。
通常プランでは都度購入が必要ですが、聴き放題プランでは月額750円でプラン名の通り聴き放題になります。また、ポッドキャストとしても音声コンテンツを配信しており、ポッドキャストプランでは、番組単位で登録して月額課金することで利用できます。
最近では、新しいサービスがどんどん誕生しています。「VOOX」もそのひとつです。VOOXは学びに特化した音声メディアで、ベストセラー本やビジネス書などの著者が自身の声で語るコンテンツを聴けるのが特徴です。
「10分、聴くだけ、既成概念が崩れる。思考力を磨く音声メディア」
というキャッチコピーにあるように、学びたいけれど時間がない方に向けて、本人の声を通して音声コンテンツを提供しています。
随時新しいコンテンツが追加されていますが、配信日から2週間は無料で聴くことができます。月額1,000円(税込)で、配信日にかかわらずすべての音声コンテンツを利用できます。
ポッドキャストは、インターネットを通して音楽やラジオなどを聴くことができる音声メディアです。分類方法によっては、インターネットラジオの一種と捉えることもできます。ストリーミング再生が基本ですが、事前にダウンロードすることでオフラインでも再生することが可能です。
ポッドキャスト(Podcast)は、もともと「iPod」と「broadcast」を組み合わせて作られた造語です。そのためAppleのサービスだと認識している方もいるかもしれません。しかし今では、iOSはもちろんのこと、Androidにも「Google Podcasts」をはじめとしたポッドキャストアプリがたくさんあります。
ポッドキャストでは、RSSという仕組みを利用して配信されているため、同じ音声コンテンツが複数のポッドキャストサービスで聴けるというケースがほとんどですが、中にはオリジナルコンテンツもあります。サービスを比較する時は、独自コンテンツに何があるのか、という点でも見てみましょう。
また、ポッドキャストサービス単体として提供されているもののほか、音楽配信サービスと一緒に提供されているケースも増えています。聴きたいコンテンツが配信されているか、あるいは自分が利用している端末やサービスに合わせて、使うサービスを選んでもよいでしょう。
そんなポッドキャストですが、基本的には誰でも音声コンテンツを投稿できるようになっています。コンテンツのジャンルは英会話やニュースから、政治、エンタメ、ドラマまでさまざまです。配信する前に、審査が必要な点は留意しておきましょう。
Apple Podcastは、その名の通りAppleが提供するポッドキャスト型音声メディアです。「Podcast」という言葉はApple製の音楽再生プレイヤーである「iPod」と、放送を意味する「broadcast」を組み合わせて作られた造語なので、Apple Podcastはポッドキャストのパイオニア的な存在です。
基本的にApple端末を持っている方が使えるアプリです。iPhoneなどのAppleデバイスでは標準アプリとしてインストールされているため、簡単に利用できます。Androidスマートフォンを利用している方は、他のポッドキャストサービスをご利用ください。
ビジネスからエンタメまで、さまざまなジャンルの音声コンテンツを無料で利用できます。配信者が有料サブスクリプションを設定している場合は、その設定金額を払う必要があります。
反対に、Apple Podcastへ音声コンテンツを配信することもできます。有料のサブスクリプションを設定することもできますが、そのためにはまず利用料金を支払う必要があるので注意してください。
Google Podcastsは、その名の通りGoogleが提供するポッドキャスト型音声メディアです。
Apple Podcastと違って、Google PodcastsはiOS・Androidどちらの端末でもアプリが利用できます。もちろんウェブでも利用可能です。また、Apple Podcastと違って基本的に無料で音声コンテンツを利用できます。
また、オリジナルコンテンツを配信することもできます。記事執筆時現在は確認できませんでしたが、2021年ごろにはGoogle Podcastsの音声コンテンツがGoogle検索結果に出ていた時期があります。もし今後本格的に検索結果に表示されるようになれば、配信する側の方とっては確実にメリットになるでしょう。
Spotifyと言えば音楽配信サービス、と認識されている方も多いと思いますが、ポッドキャストの機能も持っています。ウェブ、アプリどちらも可能です。
Spotifyでもストリーミング再生のほか、ダウンロードすることでオフライン再生が可能です。ただし、30日に一度インターネットに接続しないと、ダウンロードしたコンテンツが消えてしまいます。また、音楽をダウンロードして視聴するには有料プランへの加入が必要なのでご注意ください。
また、無料で音声コンテンツを配信することもできます。
Amazon Musicも、その名の通り、Amazonが提供する音楽配信サービスとして有名ですが、ポッドキャストにも対応しています。ウェブ、アプリどちらでも利用できます。
Amazon Musicでポッドキャスト音声コンテンツを聴くためには、Amazonアカウントが必要です。Amazon Musicにはいくつかのプランがありますが、ポッドキャストに関してはどのプランでもコンテンツの内容は同じなので、もしAmazonアカウントをお持ちでない方は無料アカウントで問題ないでしょう。
他のポッドキャストサービスと同様、Amazon Musicでも音声コンテンツを配信することができます。
音声SNSは、その名の通りSNS型の音声メディアです。
音声コンテンツを聴くためにまず投稿者をフォローするところから始まり、音声で会話したり、途中参加したり、ただ聴いていたり、コメントしたりと、さまざまな関わり方があります。
2021年の初旬に日本でも話題になったClubhouse(クラブハウス)が、音声SNSサービスの代表例です。
Clubhouseは、世界中で話題になった音声SNSの先駆け的なサービスです。スマートフォンアプリのみで利用できます。
もともと録音が禁止という特徴に加え、ベータ版下での招待制という特徴が相まって、クローズドであるが故に注目度が一段と上がりました。現在はベータ版も終了し、招待制ではなく誰でも利用できます。
Clubhouseでは基本的に誰でも配信が可能です。以前は過去のコンテンツを聴くこともできませんでしたが、現在はアーカイブ機能も備えています。
Twitter Spacesは、その名の通りTwitterが提供する音声SNSサービスです。Twitterと同じくスマートフォン用アプリから利用できます。聴くだけならウェブからも利用可能です。
Twitter Spacesでは、スペースと呼ばれるコミュニティでやり取りが行われます。どのスペースもインターネット上で公開され、(ブロックされている場合を除いて)Tiwitterアカウントを持っていない人でも聴くことができるため、基本的に情報がオープンであることが特徴です。
なお、スペースを作る側(ホスト)になるにはTwitterアカウントが必要です。
Spoonは、韓国発の音声SNSサービスです。ウェブおよびスマートフォンアプリから利用可能です。
音声ライブ配信プラットフォームと謳っている通り、「LIVE」と呼ばれるリアルタイム配信をメインコンテンツとしています。事前に録音したコンテンツも配信・視聴でき、それら音声コンテンツを通してユーザー同士がコミュニケーションを取ることができます。
また、気に入った配信者(スピーカー)にはスプーンと呼ばれる投げ銭を行うことで応援することができます。そういった点を踏まえても、ライブ配信サービスの音声ver.というイメージが近いかもしれません。
配信するための審査も必要ないため、気軽に音声コンテンツを配信できます。
音声プラットフォームとは、音声コンテンツを収録、配信できる機能と、そのコンテンツを聴ける両方の場所=プラットフォームを持つ音声メディアです。
ポッドキャストと機能面では同じですが、ポッドキャストがRSSを利用して音声コンテンツを配信しているのに対し、音声プラットフォームは各サービスのサーバーにアップされているため、基本的に独自コンテンツとなっているのが特徴です。
Voicyは、音声配信プラットフォームと謳っている通り、さまざまなジャンルに関して高品質な音声コンテンツをそろえるプラットフォーム型サービスです。
音声プラットフォームと言えども、Voicyは審査が厳しいことで有名です。審査通過率はなんと2021年3月時点で1%前後と非常に狭き門となっています。その分、良質なコンテンツが集まっているというわけです。
Voicyは基本的に事前に録音されたコンテンツを聴くことができます。ウェブ、スマートフォンアプリいずれからも利用可能です。有名人やインフルエンサーに加え、たくさんの企業がアカウントを持っており、さまざまな用途で利用されています。
基本的には無料で利用できますが、有料で特定の配信者(パーソナリティ)のプレミアムリスナーになることができます。プレミアムリスナー限定で配信されるコンテンツが利用可能です。
Stand.fmは、誰でも簡単に音声配信ができる音声プラットフォームです。ウェブでもスマートフォンアプリでも、どちらでも利用できます。
有料コンテンツやコイン(ギフト)の購入を除いて、無料で利用可能です。好きな配信者(チャンネル)をフォローして、ライブ配信・事前に録音された配信いずれも聴くことができます。
Voicyとは違い、審査なしで誰でも配信できます。ただし、チャンネルを収益化する場合には、一定以上のフォロワー数を持った上でSPPと呼ばれるプログラムへの参加申請をする必要があり、こちらは審査があります。
以前はHimalaya(ヒマラヤ)という中国発の音声プラットフォームサービスがありましたが、日本でのサービス提供を縮小することを決定し、既存チャンネルを含む一部サービスはStand.fmへ移行しています。
ここまでは、機能や特徴ごとにサービスを紹介してきました。一口に音声メディアと言っても、多くのサービスがあるため、選び方に迷っている方もいるかと思います。
音声メディアの選び方のひとつとして、目的に合わせたおすすめの音声メディアを整理したので、参考にしてみてください。
本を読むのが苦手だったり、ながら聴きしたい方には、オーディオブックサービスがぴったりです。自分の読みたい本を音声コンテンツとして扱っているかはサービス利用前にチェックしましょう!
Audibleとaudiobook.jpは基本的に有料で利用することになります。VOOXはタイトル数は少ないですが、本の内容やその他のトピックについて本人が語っているという特徴があります。
ラジオのような音声コンテンツを好きな時に聴きたい方には、インターネットラジオ、またはポッドキャストがおすすめです。有名人など、自分の好きな人の音声コンテンツがどこで配信されているかをチェックしましょう!
インターネットラジオのRadikoやVOOXの場合、視聴するタイミングやエリアによっては有料利用が必要です。ポッドキャストの場合は、取り扱っている音声コンテンツの数に差が出づらいので、使いやすい/使い慣れているサービスを選ぶことをおすすめします。
配信されている音声コンテンツに対して、あるいは音声を通して意見交換をしたい方には、音声SNSがおすすめです。
気軽に使えるサービスが多いので、試しに使いながら自分に合ったものを探してみてはいかがでしょうか?
勉強したいけれど時間がない、音声コンテンツで勉強したいといった方には、オーディオブック、ポッドキャストなどがおすすめです。
中でも、取り扱う音声コンテンツの多いものや、独自コンテンツを取り揃えているサービスを使ってみるのはいかがでしょうか?
音声メディアを利用する際は、スマートフォンアプリで利用するのがおすすめです。今回ご紹介した音声メディアは、いずれもスマートフォンアプリで利用可能です。
一部例外として、Apple PodcastはiOSの端末でしか利用できないので、代替案であるGoolge Podcastsなどを利用するか、ウェブで利用する必要があります。
技術の進歩により、簡単に録音できる環境もどんどん整備されています。自分の音声を録音して配信したい方は、その機能に特化したサービスの利用をおすすめします。
これ以外にも録音したものを配信できるサービスはあります。ただし、配信者になるための審査基準が厳しかったり、配信するまでに別サービスの利用や特別な準備が必要で面倒だったりするものもあるので、そういったサービスはここでは除いています。