【書き起こし】広屋佑規さん「オンライン演劇の可能性」 を語る

プロから直接学べる音声メディアVOOX。10分×全6回のコースのうちの、第1話「最高再生数1000万回、オンライン演劇とは何か」を書き起こしで紹介。コロナ禍による外出自粛の中で旗揚げされた「劇団ノーミーツ」を主催する広屋佑規さんが、オンラインならではの演出や制作過程、SNSを駆使したファンマーケティングを語ります。

(オープニングジングル)
広屋:

皆さんはじめまして。「劇団ノーミーツ」主催の広屋佑規と申します。今回よりお送りする「オンライン演劇の可能性」では、コロナ禍で旗揚げしたオンライン劇団「劇団ノーミーツ」が、どのようにオンライン演劇を成功させてきたのか、そしてオンラインならではの演出や製作過程、そしてSNSを使ったファンマーケティングなどを話しながら、オンラインを活用した演劇、さらにはエンターテイメントについて、今僕自身が考えていることをお話できたらいいなと思っております。

ということで本題に入る前にですね、まずそもそも「劇団ノーミーツ」はなんぞやというところのご説明と、あと僕自身の自己紹介をさせていただきたいなと思っております。「劇団ノーミーツ」とは、2020年の4月7日、1度目の緊急事態宣言の渦中に旗揚げしたオンライン劇団です。通常演劇はもちろん劇場でやるもの、というのがあるんですけれども、じゃなくてオンライン上で、私たちはZoomというリモートのビデオツールを活用して演劇を作るというところを最初の試みとして始めた劇団です。最初はですね、短編のZoom演劇作品といわれるものをTwitterを中心に発表しておりまして、2021年4月現在の段階で3000万回、再生回数をいっていたり、あとそこから短編に止まらず、長編のオンライン演劇公演を3作品上演いたしまして、そちらも1.2万人の動員をしていたりと、オンラインを中心とした演劇作品というものを上演している劇団でございます。

どういったものがZoom演劇作品なんだろうという事は、なかなか音声だけだとイメージしづらいかなと思うんですけれども、1回目の緊急事態宣言の中で、皆さん急にZoomだったりとか、オンラインでの活動を余儀なくされた方がたくさんいたんじゃないかなと思うんですけど、その中で起こっていたであろうZoom上のあるあるみたいなものを、例えばコミカルに描いてみたりとか、例えばちょっと感動できるように描いてみたりとか、いろんなコロナ禍であったであろう、あるあるみたいなものを演劇として表現して、それをTwitterの140秒にキュッとまとめて発表したりしていました。


Twitter上で1000万再生


1番話題になった作品で言うと、「ダルい上司の打ち合わせ回避する方法考えた。」という作品があります。もしかしたら見ていただいた方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、これは、この作品だけでTwitter上で1000万回上回るぐらい、まあ、なかなか1000万回って、僕もその当時は全然どれぐらいなんだろうってあんまりピンと来てなかったですが、本当に海外の有名なメジャーアーティストでもなかなか4桁万回っていってないぐらいの数字ってことを後々知って、本当に自分自身でもすごく驚いた当時のことを思い出すんですけれども。その作品が、いわゆるダルい上司がZoom越しに色々説教してくるような人がいるんですけども、その上司の説教をうまくリモートのいろいろな技術を活用して、聞いてなくしていた社員たちのその様子が、だんだん上司にばれていくという作品がありまして、結果でいろんな落ちもあって、凄くそれを面白がっていただいて、なんか当時1度目の緊急事態宣言中って、なかなか、特にエンタメを作っている人たちは何をしたらいいんだろうとか、すでにあるものをどう守っていこうか、みたいなことを動いている方々が多い印象があったんですけども、その中で僕としては、何か自宅にいながらできることはないんだろうか、というところで始めたような活動になっています。そこで多くの方に知っていただいて、そこから今があるみたいなことをしておりました。

一応その後もいろんな活動を経て、昨年で言うと例えば国内最大の広告賞であるACCのTOKYO CREATIVITY AWARDSという賞をいただいたりとか、あとは演劇界の芥川賞と言われる岸田國士戯曲賞の最終選考ノミネートを頂いたりとかですね、あとは文化庁のメディア芸術祭なんかでも受賞させて頂いたり。色々な評価いただいている一方で、今はそのオンライン演劇みたいなジャンルがもっともっといろんな可能性を秘めているものであって、さらに広まったらいいなということを思っているので、そこでですね、例えば自分たちでオンラインの専用劇場「オンライン劇場ZA.」というものを作ってみたり。あとは今は自分たちの自主公演だけではなく、いろんな企業さんとのコラボをさせていただいて、例えばサンリオピューロランドさんとのコラボ公演になったりとか、アイドルグループのHKT48さんとのコラボ公演であったりとか、そういった他企業の方々ともコラボをしたりしながら、オンライン演劇の可能性を広げているといった活動しております。

実際そういうことをやっている僕自身どういった人かという、簡単な自己紹介もしたいなと思うんですけれども、僕自身、全くオンラインに開けている人間では当時はありませんでした。逆にですね、むしろ三密と言われてるものが大好きな人間でして、どういうことかというと、僕はもともと公共空間とか街中とか、そういった開けた場所が好きで、そこでその街をハックして、街中でドッキリを作ってみたりとか、街中を活用したエンターテイメントを作るといった活動をしていました。没入型ライブエンタメカンパニー「Out Of Theater」というプロジェクトを立ち上げていって、そこで例えば横浜元町にある500mぐらいある商店街さんすべてをミュージカルの舞台に見たてたSTREET THE MUSICALlというショーを作ってみたりとか、あとは店員さんが全員ミュージカル俳優のレストランMusical Dinerという企画を作ってみたりとかです。


「イマーシブシアター」からオンラインへ


そこの延長線に、実は演劇業界の中でロンドンであったりとかニューヨークとか、演劇が盛んな都市は演劇の新しい形として「イマーシブシアター」という、ちょっと専門的な用語になってくるんですけども。「イマーシブシアター」と言われる新しい未来の形態が、実は演劇が盛んな町ではコロナ前は特に流行っていて、そういったものが凄く僕自身も面白いなと感じていて、その「イマーシブシアター」作りみたいなこともしていました。「イマーシブシアター」と言われているものも、どういうことかというと、通常の演劇は、舞台上の役者さんと客席にいるお客さんが、劇場の中でお芝居をしてそれを見る、という関係性で演じているものが基本的な演劇かなと思うんですけれども「イマーシブシアター」は、例えばお客さんと舞台上の垣根がなかったりですとか、本当に目の前で演者さんがパフォーマンスをしているのを、お客さんが覗き込むとか、そういうふうに従来の演劇の形を崩したスタイルみたいなものが海外の方で流行っています。そういったものが元々面白いなぁと思って活動していて、そういったことを日本でもこれからどんどん増やして行きたいな思っていた矢先、昨年のコロナになってしまいまい、実は2020年、色々な「イマーシブシアター」企画というものを準備していたんですが、それがすべて延期・中止になってしまいました。

なので、その中でただ自粛するのではなくて、もちろんそういった三密がある企画が大好きだったので続けていきたい想いがあったんですが、自粛しなければいけない状況の中で、今できることは何かないかなというところで、先ほどお話した「劇団ノーミーツ」の活動を始めるというのがきっかけになっています。なので、そこではある種Zoomというものを、もしかしたら人と人が会話できるのであれば、舞台空間というふうに見立てることもできるのではないか、みたいなところが発想の元としてはあって、それを演劇の可能性をある種開拓しようとしていた私自身が、オンラインを演劇空間にできるかもしれないなぁというところが、実は最初の思いとしてあって、旗揚げしたという経緯になります。

実は劇団員、最初は私含め主催3名で始めた劇団なんですが、今では一応25名にまで劇団員が増えまして日夜活動中なんですけれども、今回せっかくこういった場をいただいたので、僕たち「劇団ノーミーツ」が、どういうふうにお客様をオンライン上で集め、そしてどういうふうにそういったチーム作りをして活動してきたからこそ、今考える、実際のリアルな演劇とオンラインの演劇の違いであったりとか、特徴みたいなことをいろいろ気づいているところがあるので、そういったところを話しできたらいいなと思いますし、そこからオンライン演劇、今後こういう風に発展していけるんじゃないかとか、それは何も演劇に限らず、オンラインを活用したライブエンタメの可能性って、いろんなジャンルで言われていることがあるんですけれども、その中で上手くいっている方と、もっとこういうふうに工夫しなきゃいけないんじゃないかって悩まれてる方も僕の周りにもすごく多くいるなと思っていて、そこに何かヒントになるようなことが、今回のこの会を通じてお伝えしたらいいかなと思っております。以上広屋佑規でした。

(以上書き起こし終了)

「オンライン演劇の可能性」 を語る全6話 60min
1. 最高再生数1000万回、オンライン演劇とは何か
2. どうやって集客したか
3. リモート中心の組織づくり
4. 演劇とは何か
5. コロナから一年経って
6. オンライン演劇の可能性

広屋佑規
プロデューサー
劇団ノーミーツ主宰 / 株式会社Meets代表。コロナ禍で全ての仕事が中止となったなか、フルリモート劇団「劇団ノーミーツ」旗揚げ。短編Zoom演劇作品は3000万回再生、長編オンライン演劇公演は1.2万人を動員、多くのお客様に自宅から観劇いただく。オンライン演劇の可能性を追求しオンライン劇場「ZA」を建設。第60回ACC クリエイティブ・イノベーション部門ゴールド受賞。

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