会話とは「会って、話すこと」。それは日常的な行為だが、人はなぜ人と会って会話をしたいのか。そこには「アジェンダがあるから」という理由では説明できない人間の欲求に根ざしたものがありそうだ。巷の会話術の本では、「相手の話をよく聴く」「うなづきながら聴く」「相手に関心を持つ」などと書かれることが多いが、コピーライターの田中氏はそれらを全て否定する。自分のことは語らない、そして相手の聞き出さない、それが会話術だと。基本的に、相手の話を聴くのはしんどいし、言葉のやりとりは人を傷つける諸刃の刃である。人が人と語りたい欲求は、それらお互いに理解したいという欲求ではなく、会話の時間そのものの刹那を楽しみたいのである。会話の主役は自分のことでも相手のことでもなく、お互いの外部にある「そこにあるもの」であり、それへの共感がお互いの存在を認め合う時間となるのだ。本シリーズでは、巷に言われる会話術とはまるで違う、それで持って究極の会話とはこれではないかと思わせる話を田中氏に語っていただく。
アプリで聴いてみよう